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あらかじめ民間保険に加入する必要があり、加入できるのは所得と健康状態が一定以上のレベルの人々に限られます。
しかし、各種の世論調査から明らかなように、国民の大多数は支払能力によって医療に格差が生じることに反対しています。 特にお金がなくて1階部分の医療しか受けられなくて患者が亡くなった場合には、政府の責任が追及されます。
ちなみに、市場原理主義が国策になりつつあるアメリカでさえも、生活困窮者に対する高価な医薬品の給付を一律に認めないような制度になっていません。 以上の点から、自己責任による自己選択を基本とした医療制度の設計は難しいといえましょう。

したがって、患者の信頼を得るために、医師が積極的に情報を提供し、またコミュニケーション能力を高める必要は確かにありますが、制度としては公平にしなければなりません。 つまり、公的医療保険はセーフティネットではなく、だれでもが公平に扱われる司法や警察と同じレベルに位置づけられるべきです。
これに対して、介護保険は医療保険と異なり、公的保障の範囲を1階部分に限定した制度です。 したがって、それ以上を望んだ場合には私費で追加的に購入することが認められており、過半数の受給者が満足する水準のケアを保障すればよいことになります。
一方、生活保護では、衣食住におけるナショナル・ミニマムの水準を保障すればよいことになります。 こうした各制度における給付・支給基準は、自己責任の程度、および消費者として選択できる程度に対応しています。
したがって、社会保障給付費の抑制を図る際にも、各々の基準を守りながら見直す必要があります。 第2の課題は、医療保険、介護保険、生活保護の相互の関係性です。
まず、介護保険を創設した目的の1つは、医療保険における社会的入院を解消し、給付を適正化することでした。 すぐには実現しませんでしたが、2011年度末までには医療ニーズの低い患者は介護老人保健施設などに移管されるので達成されます。
その結果、医療保険の給付費は減りますが、その分、介護保険の給付費は増えます。 一方、介護保険においても、給付費を抑制し、在宅と施設の給付の格差を解消するために、2005年10月から施設において居住費の一部を徴収するようになりました。
その結果、介護保険の給付費は減りましたが、その分、自己負担が増えました。 問題は、居住費の徴収が全額でなく一部に留まり、また自己負担できない低所得者に対して本来は生活保護から支給すべきでしたが、介護保険からの補足給付によって賄われていることにあります。
その結果、施設の方が在宅と比べて給付が恵まれているため、特別養護老人ホームに入所するのに数年待たねばならない状況が改善する見通しはありません。 居住費を自己負担できない場合に、なぜドイツのようにその全額を生活保護から支給する対応をとらなかったのでしょうか。

日本の施設ではサービスと住居が一体で提供されてきたため、両者をすぐに分離することが難しかったことにあります。 もう1つは、生活保護を支給する基準が不透明で、各福祉事務所の裁量に実質的に任されていることにあります。
そのため、一方では生活困窮者の申請が不当に受理されない可能性があり、他方では申請すれば老後の生活は保障されるというように認識される可能性があります。 そもそも1人暮らしに対する生活保護の支給額は国民年金よりも多く、特に大都市では地域の物価水準を反映してさらに増額されるので、年金を納める意欲が低下しても不思議ではありません。
なお、人口当たりの生活保護支給率には都道府県によって10倍の格差があり、5割に留まる医療費と比べて格段に大きくなっています。 したがって、介護保険施設における居住費を生活保護から支給するためには、親を扶養する子供の義務に対する行政としての対応、および施設に入所した場合の配偶者の生活を保障する措置をそれぞれ用意する必要があります。
現状では子供が親を扶養する義務は民法上規定されていますが、行政として子供の責任を追及する方法は用意されていません。 しかし、これらの理由よりも現実的に大きな障壁は、生活保護費が2007年度の予算において減額が決まり、対象範囲の拡大が不可能なことにあります。
これは社会保障の各制度間の波及効果を考慮せずに、それぞれにおいて抑制策がとられたために生じた問題です。 原理的には、社会保障給付費の総額を抑制する方法としては、医療保険は介護保険、生活保護は介護保険よりもそれぞれ難しいので、医療保険と介護保険の範囲を狭くし、生活保護の対象を広めて予算を増額した方が財政規律にかなっています。
こうした観点からも、「社会保障給付費」に一括されている内容を、各々の給付基準に沿って組み直したうえで、国民に世代間の所得移転を求めた方が、賛同が得られやすいと思われます。 特に医療において、公平な医療サービスを保障するために国民に所得移転を求めることと、年金保険において現役時代に準じた所得を保障するために求めることとでは、国民の受け取り方が異なるでしょう。
第3の課題は、国と地方のそれぞれの責任と負担です。 これらについて原則が確立されていないために、財源が厳しくなると互いに相手に転嫁しようとする動きが強まり、また、各地方における固有な事情により社会保障給付費に占める各制度の構成比の格差がますます広がる可能性があります。

こうした事態を回避するために、まず下記の条件を整備し、次いで社会保障給付費を全体的に管理する責任を都道府県に委譲するべきです。 国の責任は、都道府県による所得水準と年齢構成などの格差、および物価水準の格差を調整し、負担することです。
前者は需要側、後者は供給側(生活保護の場合は受給者)に対して所与の条件として与えられており、各県の社会保障政策では対応できないからです。 都道府県として、各制度を適切に運営し、かつ、社会保障全体を効率的に管理できる人材の育成・確保することです。
これまで県は国の政策を市町村に徹底する中間的な存在で、予算も幹部人事も国に依存してきたために、必ずしも有能な人材を確保できず、こうした状態を改革することが自治体として自立する条件です。 政策を評価するためのデータベースの整備です。
特に社会保障給付費を全体として管理するためには、各個人がそれぞれの制度から給付されるサービスをフォローするパネルデータの構築が必要です。 これは、現在検討されている社会保障給付費の個人勘定の通知と発想がまったく異なり、各個人の損得を浮き彫りにするのではなく、県として制度を横断的に管理し、効率化することに目的があります。
社会保障の地方分権に向けての改革は医療が先行しており、後期高齢者の医療保険、国保、政管健保はそれぞれ都道府県単位に再編されることが決まりました。 また、介護保険においても、都道府県に介護保険事業支援計画を策定する義務が創設時からあり、2005年の改革では県の施設に対する給付費の負担割合が12.5%から17,5%に引き上げられています。
一方、都道府県の伝統的な役割である市町村への公共事業費の配分は総額としても、また政令市などの増加によっても、縮小の一途をたどることになります。

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